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円錐角膜に対する角膜リング挿入術の説明
円錐角膜とは?

円錐角膜とは、角膜が薄くなり、角膜の中央部が前方へ円錐状に突出する病気です。近視または不正乱視(不規則な乱視)の原因となります。主に思春期に発症し、30歳を過ぎると多くの場合は進行が止まります。発症に性差(日本では男性:女性=3:1)があるため、ホルモンとの関連が推測されていますが、まだ確定しておらず、目をこするくせやアトピーとの関係が深いと言われています。また、初期の円錐角膜には自覚症状がなく、精密検査の結果、発見されることが多いようです。症状は軽度から強度まで人により様々です。
円錐角膜の治療法
- 円錐角膜の初期で程度が軽いうちは、眼鏡による矯正が可能な場合があります。
- 円錐角膜がある程度進行すると眼鏡では充分な矯正ができなくなり、ハードコンタクトレンズによる矯正が必要となります。しかしさらに進行すると、コンタクトレンズでは十分な視力が出なくなったり、装用時の異物感やレンズのズレが起こりやすくなり、長時間の装用が難しくなってきます。
- ハードコンタクトレンズでの矯正ができなくなった場合の円錐角膜の治療手段は、従来、角膜移植しかありませんでした。円錐角膜に対する角膜移植の成績は、比較的良好ですが、拒絶反応や続発緑内障などの術後合併症を生じる例もあります。また、打撲による創口離開のリスクも存在するなど、長期にわたる通院・加療が必要となります。
角膜内リング(ICRS:Intrastromal Corneal Ring Segments, Intacs)について
円錐角膜の治療法として、近年、角膜実質内に輪状の薄片を挿入する方法が行われるようになりました。角膜の周辺部に作成したトンネルに2枚のプラスチック製のリング(レンチクル)を挿入すると、リングは角膜を押し出す形になり、円錐状になった角膜を平坦化させることで近視や乱視が軽減します。角膜内リングは、当初近視治療用として1999年にアメリカFDA(日本の厚生労働省に当たる機関)から承認を受けました。2004年7月にはFDAにより適用範囲が円錐角膜まで拡大されました。始めに開発されたアメリカでは、Intrastromal Corneal Ring Segmentsと呼ばれており、その略号として、ICRS、INTACS、ICRなどとよばれます(INTACSは商品名)。わが国では角膜リングと呼ばれることが多いようです。

角膜リングの利点と欠点
利点
- 局所麻酔下に外来で行うことができます(全身状態や通院が難しい場合は、入院をお薦めする場合もあります)。
- 角膜の組織を切除せず、切開も小さいので、打撲によって傷口が開くなどの合併症がおきにくい手術です。
- ドナー角膜を必要としません。
- 角膜移植に比べて、拒絶反応、緑内障など重度の合併症の頻度が少ない手術です。
- 近視や乱視が軽減するため裸眼視力がある程度向上します。
- 円錐角膜の進行を遅らせることができると考えられています。(注:円錐角膜の進行については、個人差が大きく、強膜リング手術を受けても進行する場合もあります)
- ソフトコンタクトレンズやメガネでの視力矯正が可能となることもあります。
- 術後の結果が思わしくない場合、リングを除去することが可能であり、その場合手術前に近い状態に戻すことができます。
欠点
- 視力が安定するのに1ヶ月ほどかかります。
- 円錐角膜の進行を完全の防止するわけではありません。
- 視力向上の効果に個人差があり、その予測がつかない場合があります。
- 手術後の視力向上は、角膜移植に比べて劇的でない場合が多いと考えられます。
- 世界的に見てもこの治療を受けた症例数はあまり多くなく、長期間の成績については不明な点も多いのが現状です。
- 後の述べるような合併症を起こす場合があります。
どういう方に適しているか?
- 進行性の円錐角膜で、そのため近視、乱視になっている方
- メガネ、コンタクトレンズで十分な視力が出ない方
- 角膜リング手術の内容、利点と欠点、合併症について十分説明を受け、納得された方
角膜リング手術に適していない方
- 未成年者
- 妊娠中、または授乳中の方
- 膠原病、自己免疫疾患で治療中の方
- 角膜手術の結果に影響を及ぼす可能性のある眼疾患を持っている方
- 創傷治癒(傷の治り方)に悪影響を及ぼす内服薬、点眼薬を使用中の方
- 円錐角膜の進行により角膜が極端に薄くなったり、中央部に混濁が生じたりしている方
- 以前に急性水腫(急激に角膜が白くなる)を生じたことがある方
治療の流れ
1.術前検査
眼科的検査、および全身検査を行います。
治療方法について担当医と話し合い、角膜リング手術を受けることに同意された場合には、さらに必要な検査を行い、使用するリングのタイプが決定されます。
2.手術
- 手術は、フェムトセカンドレーザーが設置されている東京歯科大学水道橋病院で行われます。
- 手術は手術室で行われ、眼の消毒のあとに点眼薬による麻酔を行います。
- まず、角膜の周辺部にリングを入れるトンネルを作ります。このトンネルは、角膜実質組織中に作られます。本の間にペンをはさむようなイメージが近いと思います。
以前は、トレパンと呼ばれる金属製の専用器具を用いてトンネル作成を行っていましたが、近年フェムトセカンドレーザーとよばれるレーザー機器を用いて行うことができるようになりました。これにより安全性が向上しました。
フェムトセカンドレーザーとは?
フェムトセカンドレーザーは、紫外線領域のレーザーをごく短時間、角膜内の非常に狭い場所にあてることで、一定の深さに1ミクロンほどのスペースを作成します。同じ深さにスペースを作りながら移動することで、非常にスムースな切開を行うことができます。
- レーザー手術の後、眼科手術用顕微鏡の下に移動していただき、作成したトンネルの中にリングを挿入します。
- 最後にリングを入れた場所を1針縫い、抗生剤の点眼をして手術は終了です。
- 全体で30分ほどの手術で、ほとんど場合外来手術として行います。
術後診察
角膜内リングの手術後は、定期的に以下の日程で検査が必要になります。
翌日・(3日後)・1週間後・1ヶ月後・3ヶ月後・6ヶ月後・1年に1回
術後の注意事項
手術後1ヶ月程は以下の点に注意して生活していただく必要があります。
- 翌日の検査が終わるまでは、入浴・洗髪・洗顔を控えてください。
- 手術後1週間までは外出時に保護用眼鏡、睡眠時に保護用眼帯を使用してください。
- 処方された点眼薬は、指示があるまで継続して使用してください。
- すべてのスポーツは1ヶ月間控えてください。(水泳を含む)
- 基本的にコンタクトレンズの使用は3ヶ月ぐらい控えてください。
- 手術後に急な痛み、視力低下が生じた場合には、担当医にご連絡下さい。
合併症
手術によって失明や極端な視力低下につながる合併症を起こすことは、角膜移植などに比べてまれですが、以下に述べるような合併症が起こりえます。
- 感染症:リングを挿入した傷口から感染を起こすことがあり得ます。
- 見え方の変動:治療後1-2ヶ月は見え方の変動が起こります。また、光をまぶしく感じる、何となくくっきり見えない(コントラストの低下)、夜になると光がにじんで見えるなどの症状は、かなりの割合で起こります。通常徐々に減って気にならなくなりますが、場合によっては長期間持続することも起こりえます。
- 挿入時にリングが前房や角膜表面に穿孔してしまう事故がありえます。
- 術後リングの位置が動いたり、脱出することがありえます。
- リングを挿入したトンネル中に、沈着物が生じることがあります。
- 手術を行った部位に対して新生血管が生じることがあります。
これらの合併症が生じて、内科的治療にて改善しない場合、リングの除去が必要となる場合があります。除去は手術室で行われ、数日の入院が必要となる場合もあります。リングを除去した後は、手術前とほぼ同様の状態に戻りますが、場合によっては完全に元に戻らない場合もあります。リング除去後に視力回復を図るためには、角膜移植による治療が必要となる場合が多いと考えられます。
円錐角膜に対する角膜リング手術は比較的新しい治療法であり、ここに記載されていないまれな合併症が術後間もなく、あるいは長期間経過した後に生じることもあり得ます。
他の治療法
円錐角膜の治療法としては、角膜リング以外に、眼鏡(メガネ)、ソフトコンタクトレンズ、ハードコンタクトレンズ、表層角膜移植、全層角膜移植などがあります。
費用
強膜リング治療は、保険が適応されておらず、リングはアメリカの会社より取り寄せて手術が行われます。リングの購入費用、フェムトセカンドレーザー照射に必要な実費については、患者負担となります。万一、後でリングの除去が必要となった場合でも、これらの費用の返却はできません。手術前、および術後の検査については、健康保険が適応となります。




